2013年6月17日月曜日

小浜温泉バイナリー発電所

小浜温泉バイナリー発電所

長崎は小浜温泉へ行ってきたのはこれを見るためでした。
研究会で知り合った方のご好意に甘えて詳しい説明と中の設備も見せていただきました。
ちなみに写真で煙を吐いているのは貯湯タンクで、発電設備は左の白い建物内にあります。

現在は環境省からの委託事業として実証実験を行なっている段階ということで、写真にも見える案内板といただいた資料の内容から発電所について紹介してみます。
このケースは設備自体が稼働して活用されているだけでなく、地域が主体となって事業を行なっている点で今のところひとつの成功事例といってよいと思っています。
どこででもうまくいくとは限りませんが、地熱資源に恵まれた日本でこれを活用しない手はなく、これをきっかけに少しでも地熱発電という選択肢が議論の俎上にあがり、活用が進めばいいなぁと思います。

発電容量はおよそ210kW(72kW×3機)、使用している熱水は合計で約100t/時間・100℃とのこと。
小浜温泉全体での湧出量は15,000t/日=625t/時間なので全体の6分の1弱をここで利用していることになります。
コンセプトは今まで利用していなかった熱水のエネルギーを有効に活用する、ということです。



バイナリー発電という発電方式は「温泉熱で沸点の低い液体を沸騰させ、その蒸気の力でタービンを回して発電する方式」(小浜温泉エネルギー)で、新たに温泉を掘らなくても発電ができます。
小浜ではもともと100℃で温泉が湧いているので、浴用に利用するためには冷ます必要がありました。
冷ますということは熱エネルギーを捨てる、ということに他なりません。
この、今まで捨てていたエネルギーを電力に変えて使えるようにできることがバイナリー発電の特長です。

新たに温泉を掘削する必要がないので、「既存の温泉への影響がなく、源泉所有者が発電事業者になるため対立が生まれにくい」(小浜温泉エネルギー)という利点もあります。
地熱発電事業の多くは発電事業を行いたい事業者と温泉への影響を懸念する地域の人々との対立が起こりがちで、そのためになかなか実現されないケースが多くあります。
既存の温泉を有効に活用することで発電事業者と地域の人々との対立を回避し、地域の人々が発電事業から利益を得ることができるような仕組みをつくれることもバイナリー発電の特長です。

実は小浜温泉でも以前に大規模な地熱発電事業の計画がありました。
しかし外部主体による計画で新たに温泉を掘削する必要もあり、地域の反対にあって計画は中止されています。
その後、長崎大学が中心となって地域の人々に対し地熱利用に関する意見交換を重ね、「小浜温泉エネルギー活用推進協議会」が組織されて地域の人々が中心となって地熱を利用する方法を模索することになったのです。

この協議会には過去に地熱発電の反対運動の中心となったメンバーも参加しています。
地域の人々が中心となり、地域にとって利益になる地熱エネルギーの利用を図ろうとしたことが功を奏したといえそうです。
こうした事業の進め方は以前に参加したシンポジウムのメッセージとも重なり、たいへん興味惹かれるポイントです。

全国的にも取り組み事例の少ない事業であり、パイオニアゆえの困難も様々あるようです。
現在は実証実験と共に、2014年からの本格的な事業展開に向けた計画・準備も進んでいるようでした。

すでに日本各地から視察に訪れる人があったり、今回案内してくれた方を含めて若い人がやってきたりと様々な効果があらわれているようです。
人口約2400人・1100世帯の町で、雇用が数名生まれるだけでも相当違いがあるとのことでした。

実際に発電所を見てみると、かなりコンパクトな設備になっています。
同じ発電量を得るために必要な太陽光パネルや風車のことを思うと、土地利用もかなり効率的に行えるという印象です。
騒音もほとんどありません。
低周波音が問題になる風力発電と比較するとこの点でも優位性が相当あると感じました。

既存の源泉を活用できるという点では、例えば環境アセスメントなどの手続きを簡略化して短期間で事業を開始できるというところにも優位性がありそうです。

小浜温泉


まだ取り組みははじまったばかりですが、電源の分散化とともに地域の活性化にもつながりそうで今後の展開が楽しみです。
また時をおいて小浜に遊びに行きたいと思います。
(長崎のグラバー園も見逃してしまいましたし……)

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